アリーで味わう、森からの贈り物。 

12月に入り、昼と夜の寒暖差が大きくなって来ました。夜、帰る頃には(特に自転車に乗っているということもあって)刺さるような寒さ。先週からついにダウンコートを引っ張り出して来ましたよ。

季節が冬になると、ジビエも美味しい季節になって来ます。今年も、近所に住むハンターさんが大きな荷物を持ってアリーにやって来ました。

「アリーさん、キジを捕まえて来たんですけど、これ使えませんか?」

このやり取り、去年もあったな。この会話を聞くと「ああ、今年も冬が来たなあ」としみじみ感じます。
今回も立派で美しいキジだったので、ぜひうちで調理をさせてもらうことに。

ジビエとは…
狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味します。ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから愛されてきた食文化。

山野を駆け巡った天然の肉は、脂肪が少なく引き締まっていて、栄養価も非常に高くなっています。尊い命を奪う代わりに、肉だけでなく内臓や血液、骨に至るまで全ての部位を余すことなく料理に使用していくのです。

ジビエで使用する鳥は、普段使っている鶏肉とは違って皮も非常に薄い種類が多く、火入れも難しい。だからこそ、とても繊細な技術が必要とされます。
シェフもジビエを調理するたびに

「今日も白髪が増えた気がする!」

と、冗談言っています。それくらい、いつも以上に精神注いで作らねばならないのです。(シェフ曰く、その精神がビリビリ刺激される感じが調理していて非常に楽しいんだとか。)

今回使用したキジはとてもさっぱりした味わいで、ひとつ間違えるとお肉がパサパサになりかねない。
シェフが全身全霊かけて丁寧に調理したキジは、写真を見ていただいてもわかると思いますが、絶妙な火入れでしっとりプルプルに仕上がっています。見とれてしまうほど美しいピンク色ですよね。

このキジ、2種類の調理法でご用意させていただきました。
胸肉はしっとりとローストに、もも肉はレバーや砂肝をキノコのペーストと共に詰めて、パートブリック(春巻きの皮のようなもの)に包んでパリッと仕上げました。

お肉はもちろんのこと、キジの旨味を存分に凝縮させたソースも絶品で、優しく感じられる野性味にうっとり。血生臭さ等は一切無いのに、絶妙にジビエ特有の香りが優しくふわりと広がるあたり本当にズルイです。

そして、付け合せに添えられたサツマイモのキャラメリゼも、異次元なくらいに美味しかった…
。サツマイモというより、もはやスイートポテトだと言われても疑わないくらい、ほっくりと甘かった。この甘苦さがジビエと大変よく合うのです。

「キジ、今まで一度も食べたこと無いんです」

という方も、勇気を出してチャレンジしてくださったのですが、あまりの美味しさに最後の最後まで骨をガジガジしてました。(その気持ち、非常によくわかります…!綺麗に食べていただいて、ありがとうございます!)

お影様で、今回ハンターさんが捕まえてきてくれたキジは全て完売。機会があれば、今シーズン中にまたジビエ料理を出せたらいいなあ。

運良く巡り会えた時は、アリーが愛情込めて作る森からの贈り物、ぜひご賞味ください!